世界のβサラセミアの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界のβサラセミアの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Beta Thalassemia Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、βサラセミア(Beta Thalassemia)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。βサラセミアは、βグロビン鎖の産生に関与する遺伝子異常によって正常なヘモグロビン合成が障害され、慢性貧血を引き起こす遺伝性血液疾患である。地域差が非常に大きく、インドでは保因者率が約3.74%、地域によって1.4~9%とされる一方、日本ではβサラセミア保因者が一般人口の約600~1,000人に1人と推定されている。調査会社は、この不均一な遺伝的分布に加え、各国のスクリーニング体制や出生前診断へのアクセスの違いが患者数に大きく影響するとしており、2026~2035年は早期診断、保因者スクリーニング、国家レベルの予防プログラムの重要性がさらに高まるとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
βサラセミアの基本病態は、βグロビン鎖の産生低下または欠如によって、正常な成人ヘモグロビン形成が障害されることである。その結果、赤血球の形成や生存が障害され、慢性貧血、脾腫、骨変形などを呈することがある。特に重症例では成長・発達への影響も大きく、長期的な輸血管理を必要とする。
提示資料では、βサラセミアは「遺伝性貧血」「赤血球疾患」として位置づけられている。一般に軽症保因状態から重症型まで臨床スペクトラムが広く、資料ではthalassemia minorと重症型が挙げられている。
ここで重要なのは、保因者と発症患者を区別することである。βサラセミア保因者はβグロビン遺伝子異常を1つ持つが、必ずしも重症貧血を呈するわけではない。一方、重症型では複数の病的遺伝子の組み合わせによって、より強いヘモグロビン合成障害と慢性貧血が生じる。
したがって、インドの3.74%や日本の「600~1,000人に1人」という数値は、主として保因者頻度を示すものであり、そのまま重症βサラセミア患者の有病率とみなすべきではない。
2021年には、サラセミア全体の年齢標準化有病率が人口10万人あたり18.28例、年齢標準化発症率が10万人あたり1.93例とされ、世界で約11万9,679例の新規症例が報告された。
ただし、この18.28/10万人、1.93/10万人、11万9,679例は「βサラセミア単独」ではなく、βサラセミアを含むサラセミア全体のデータである可能性が高い。そのため、βサラセミア市場の患者数として直接置き換えることはできない。
また、一般人口における保因者率が数%に達する地域がある一方、年齢標準化有病率が18.28/10万人とかなり低いのは、保因者を有病患者として数えていない、あるいは疾患定義が臨床発症例中心である可能性を示している。
年齢別では、サラセミアの有病率は5歳未満の小児で最も高く、その後年齢とともに低下するとされる。これは、重症型が乳幼児期から診断されるという疾患特性を反映している。
したがって、βサラセミアは成人になって初めて発症する典型的慢性疾患とは異なり、重症例では乳幼児期から臨床的に明らかになることが多い。
年齢とともに有病率が低下するというパターンについては、出生コホート差、重症例の早期死亡、診断・治療アクセスの違いなど複数の要因が影響している可能性がある。ただし、今回の資料ではその詳細な原因までは示されていない。
性別では、全体として男性・女性で大きな差はないとされる。一部研究では35歳程度まで男性小児・若年者でやや高い発症率が示されるものの、高年齢層では差が小さくなる。
βサラセミアは常染色体性の遺伝性疾患であるため、X連鎖疾患のように明確な性差が生じる疾患ではない。したがって、世界的な患者分布では男女ほぼ同程度と考えるのが適切である。
地域別では、東南アジア、東アジア、地中海沿岸で疾患負担が高く、ラテンアメリカ・カリブ海地域では比較的低いとされる。
これはβサラセミアが地域によって遺伝子頻度に大きな差を持つ典型的な遺伝性疾患であることを示している。いわゆる「地中海性貧血」と呼ばれてきた背景も、この地中海地域での高頻度分布と関連している。
一方、現代では移住や人口移動によって、高頻度地域由来の遺伝子が北米や西欧などへ広がっているため、従来低頻度と考えられていた国でも保因者スクリーニングの重要性が高まる可能性がある。ただし、今回の資料では移民人口に関する具体的数値は示されていない。
インドでは、βサラセミア保因者率が約3.74%と推定され、地域によって1.4~9%と非常に大きな差がある。
この地域差は、民族・集団ごとの遺伝子頻度が大きく異なることを示している。そのため、インド全体の平均3.74%だけで全国の疾患負担を正確に表すことは難しい。
さらに、インドは世界のβサラセミア疾病負担の約25%を占めるとされる。人口規模が非常に大きいことに加えて、保因者率が高いことが患者数増加に直結していると考えられる。
ただし、「世界疾病負担の25%」が新規出生患者数なのか、既存患者数なのか、あるいはより広いサラセミア負担を指すのかは提示資料だけでは完全には明確でない。そのため、単一の患者数比率として断定するには注意が必要である。
日本では、βサラセミア保因者頻度が一般人口の約600~1,000人に1人と推定されている。割合に換算すると約0.1~0.17%程度に相当し、インドの3.74%よりかなり低い。
この違いは、βサラセミアの遺伝的分布が世界で非常に不均一であることを明確に示している。
一方、提示資料では、日本における「サラセミアtrait(β型とα型を合算)」が約1,000人に1人とされている。
ここにはやや注意が必要である。βサラセミア単独の保因者頻度が600~1,000人に1人である一方、β型とα型を合わせた全サラセミアtraitが1,000人に1人という表現は、単純には整合しにくい。
通常、β型とα型を合算した頻度はβ型単独以上になるはずなので、提示資料の数値には定義、対象集団、推計方法の違い、あるいは原文上の記載上の問題がある可能性がある。
したがって、日本の「βサラセミア1/600~1/1,000」と「β+αサラセミアtrait 1/1,000」は、そのまま同一母集団における比較値として扱うべきではなく、元研究の分母・対象定義を確認する必要がある。
米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国については、今回提示された資料では具体的な国別βサラセミア有病率や保因者率は示されていない。ただし、8主要市場として診断患者数と将来動向が分析されている。
欧州では、地中海地域に位置するイタリアやスペインなどで歴史的にβサラセミア遺伝子頻度が高い集団が存在するが、今回の資料からは具体的な国別率を確認できない。
市場・疫学上で最も重要なのは、「保因者頻度」「臨床発症患者の有病率」「出生時発症率」を区別することである。
例えば、インドの3.74%は保因者率であり、2021年の18.28/10万人はサラセミア全体の年齢標準化有病率、1.93/10万人は年齢標準化発症率である。これらはすべて意味が異なる。
保因者は通常、重症患者と同様の治療を必要とするわけではない。しかし、2人の保因者が子どもを持つ場合、重症型の子どもが生まれるリスクがあるため、公衆衛生上は極めて重要な集団となる。
そのため、βサラセミアの疾病負担を減らすうえでは、すでに発症した患者の治療だけでなく、保因者スクリーニングと遺伝カウンセリングが大きな役割を持つ。
特に高頻度地域では、婚前・妊娠前スクリーニング、妊娠中の遺伝学的検査、出生前診断などを体系化することが、新規重症患者出生数の減少につながる可能性がある。
この点が、調査会社が「structured national prevention programs」、すなわち国家レベルの組織的予防プログラムを重視している理由である。
治療では、重症βサラセミア患者に対する定期的な赤血球輸血が中心となる。輸血によって十分なヘモグロビン濃度を維持し、組織への酸素供給を確保する。
これにより重度の慢性貧血を改善し、成長・発達や身体機能を支えることができる。
一方、長期間の反復輸血では鉄が体内に蓄積する。人体には過剰な鉄を効率的に排泄する仕組みが乏しいため、輸血を繰り返すほど鉄過剰が問題となる。
鉄過剰は心臓、肝臓、内分泌臓器などに障害を与える可能性があるため、鉄キレート療法によって余分な鉄を除去する必要がある。
提示資料では、フェリチン値を含む鉄負荷指標を安定化させることが重要とされる。したがって、βサラセミアの長期治療では「輸血」と「鉄キレート」がセットで重要になる。
支持療法として栄養管理や定期的な合併症モニタリングも重要である。重症型では慢性貧血と鉄過剰によって多臓器への影響が生じ得るため、単にヘモグロビン値だけを管理すればよいわけではない。
本資料では治療概要が輸血・キレート療法・支持療法を中心としており、造血幹細胞移植や新しい遺伝子治療などについては記載されていない。そのため、今回の要約ではこれらをレポート上の確立した治療として追加するべきではない。
予防の面では、保因者スクリーニングと出生前検査が重要とされる。これはβサラセミアが明確な遺伝性疾患であるため、発症後の治療だけでなく、妊娠前・出生前段階でリスクを把握できるからである。
高頻度国では、保因者カップルを特定し、遺伝カウンセリングを提供することで、新規重症βサラセミア出生数を減らせる可能性がある。
したがって、2026~2035年の市場・公衆衛生動向では、診断患者数の増加と新規重症出生数の減少が同時に起こる可能性がある。
すなわち、スクリーニングを拡大すると、これまで知られていなかった保因者や軽症患者が新たに診断されるため「診断数」は増える。一方、保因者カップルへの出生前診断や予防プログラムが機能すれば、重症患者の新規出生は減る可能性がある。
このため、βサラセミア市場では「患者数が増えるか減るか」だけではなく、「保因者診断数」「重症出生数」「輸血依存患者数」などを別々に評価する必要がある。
また、年齢別に5歳未満で高い疾病負担が報告されることから、早期診断も重要である。乳幼児期に貧血や発育障害を認識し、適切な治療につなげることが長期的な予後改善に不可欠となる。
市場の観点では、βサラセミアは地域集中性の強い遺伝性疾患である。世界全体に均等に患者が分布するわけではなく、東南アジア、東アジア、地中海地域などに患者・保因者が集中する。
そのため、8主要市場の中でもインドの患者・保因者プールは日本よりかなり大きいと考えられる。一方、日本では希少疾患として診断・管理される構造になる。
治療市場では、重症患者が長期間にわたり反復輸血と鉄キレート療法を必要とするため、患者一人あたりの継続的医療負担が大きい。
さらに、輸血そのものに加え、鉄過剰のモニタリング、合併症評価、栄養管理など長期フォローアップが必要である。
2026~2035年の疫学動向を考えるうえでは、第一に、遺伝子・血液学的スクリーニングの拡大によって保因者捕捉率が向上する可能性がある。
第二に、出生前診断の普及によって、高頻度地域では重症型の新規出生数が抑制される可能性がある。
第三に、治療水準の改善によって重症患者の生存期間が長くなれば、有病患者数は蓄積する可能性がある。ただし、今回の資料では生存率改善について具体的な数値は示されていない。
第四に、国ごとの予防政策の違いが患者数に大きく影響する。特に保因率が数%に達する地域では、個別診療だけではなく国家レベルの予防プログラムが重要になる。
全体として本レポートは、βサラセミアを「βグロビン鎖産生異常によって慢性貧血を引き起こす遺伝性赤血球疾患であり、保因者から重症輸血依存型まで幅広い臨床スペクトラムを持ち、特に南・東アジアおよび地中海地域に集中する疾患」と位置づけている。
2021年のサラセミア全体では、年齢標準化有病率が18.28/10万人、発症率が1.93/10万人、世界新規症例が約11万9,679例とされる。ただし、これらはβサラセミア単独ではなく、より広いサラセミア疾患群のデータである点に注意が必要である。
年齢では5歳未満の疾病負担が高く、重症患者が幼少期から診断される疾患特性が反映されている。性別では男女差は全体として小さく、一部の若年層で男性がやや高いとの報告がある程度である。
地域別では東南アジア、東アジア、地中海地域で負担が高く、ラテンアメリカ・カリブ海では比較的低い。
インドではβサラセミア保因者率が約3.74%、地域によって1.4~9%で、世界の疾患負担の約25%を担うとされる。これに対し、日本ではβサラセミア保因者が約600~1,000人に1人とかなり低い。
ただし、日本の「βサラセミア保因者1/600~1/1,000」と「α・βを合わせたサラセミアtrait約1/1,000」という二つの数値には整合性の問題があり、元研究の対象集団や定義確認が必要である。
また、インド3.74%、日本1/600~1/1,000はいずれも主として保因者頻度であり、輸血を必要とする重症患者の有病率ではない。この区別は市場規模を評価するうえで特に重要である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、疾患遺伝子そのものが短期間で増えるというより、保因者スクリーニング、早期診断、出生前検査が拡大することで、診断される保因者・患者数が増える一方、組織的予防プログラムによって重症型の新規出生を減らせる可能性がある。
したがって、今後のβサラセミア管理における中心的課題は、高頻度地域で保因者を早期に特定すること、保因者カップルに適切な遺伝カウンセリングと出生前診断へのアクセスを提供すること、発症児を乳幼児期から適切に診断すること、重症患者では定期輸血によって十分なヘモグロビンを維持しながら鉄キレート療法で鉄過剰を管理すること、そして栄養・臓器合併症を長期的に監視することである。2026~2035年は、βサラセミアを単に「輸血を必要とする遺伝性貧血」として扱うのではなく、保因者スクリーニング、出生前予防、早期小児診断、長期輸血・鉄管理までを一体化した国家・地域レベルの疾患管理体制を構築することが、臨床・公衆衛生・市場の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
βサラセミア市場概要(8主要市場)
3.1 βサラセミア市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 βサラセミア市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
βサラセミア疫学概要(8主要市場)
4.1 βサラセミア疫学状況(2019年~2025年)
4.2 βサラセミア疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 βサラセミアの種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 βサラセミアの診断済み有病患者数
7.4 種類別のβサラセミア患者数
7.5 性別別のβサラセミア患者数
7.6 年齢別のβサラセミア患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国におけるβサラセミアの診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別のβサラセミア患者数
8.4 米国における性別別のβサラセミア患者数
8.5 米国における年齢別のβサラセミア患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国におけるβサラセミアの診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別のβサラセミア患者数
9.4 英国における性別別のβサラセミア患者数
9.5 英国における年齢別のβサラセミア患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおけるβサラセミアの診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別のβサラセミア患者数
10.4 ドイツにおける性別別のβサラセミア患者数
10.5 ドイツにおける年齢別のβサラセミア患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおけるβサラセミアの診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別のβサラセミア患者数
11.4 フランスにおける性別別のβサラセミア患者数
11.5 フランスにおける年齢別のβサラセミア患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおけるβサラセミアの診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別のβサラセミア患者数
12.4 イタリアにおける性別別のβサラセミア患者数
12.5 イタリアにおける年齢別のβサラセミア患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおけるβサラセミアの診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別のβサラセミア患者数
13.4 スペインにおける性別別のβサラセミア患者数
13.5 スペインにおける年齢別のβサラセミア患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本におけるβサラセミアの診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別のβサラセミア患者数
14.4 日本における性別別のβサラセミア患者数
14.5 日本における年齢別のβサラセミア患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおけるβサラセミアの診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別のβサラセミア患者数
15.4 インドにおける性別別のβサラセミア患者数
15.5 インドにおける年齢別のβサラセミア患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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