世界の術後イレウスの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表

2026-09-05 17:30
株式会社マーケットリサーチセンター

株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の術後イレウスの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Postoperative Ileus Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。

■主な掲載内容

本レポートは、術後イレウス(Postoperative Ileus:POI)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。POIは、主として腹部・骨盤手術後に一過性の消化管運動低下が起こり、排ガス・排便の遅延、腹部膨満、悪心、嘔吐、経口摂取不耐などを来す術後合併症である。Ya-Nan Yinらの2023年の報告では、腹部手術後のPOI発生率はおおむね10~30%とされる一方、手術内容や定義によって大きく変動する。調査会社は、POIが患者の罹病負担を増やし、入院期間を延長し、医療費を押し上げる重要な周術期合併症として、2026~2035年も大きな臨床・経済的負担を維持するとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、発症率、年齢、性別、手術タイプ、診断患者数などを分析している。

POIの基本病態は、手術侵襲により腸管の協調的な蠕動運動が一時的に低下または停止することである。原因は単一ではなく、外科的ストレス、腸管操作、炎症反応、オピオイド鎮痛薬の使用、輸液や電解質異常など複数の要因が関与する。

腹部手術では腸管そのものへの直接操作が加わるため、POIリスクが特に高くなる。さらに、全身麻酔、術後疼痛、安静、オピオイド使用なども消化管運動を抑制し、正常な腸管機能回復を遅らせる可能性がある。

臨床的には、生理的POIと遷延性・病的POIを区別することが重要である。手術後に短期間腸管運動が低下するのはある程度予想される生理的反応で、通常は2~3日程度で改善する。

一方、予想される回復期間を超えて腹部膨満、排ガス・排便遅延、悪心・嘔吐、経口摂取不耐などが持続する場合は、遷延性または病的POIとして扱われ、追加の診断・治療が必要になる。

したがって、疫学データを読む際には、単なる「術後の一過性腸管運動低下」まで含むのか、それとも「遷延性POI」のみを症例と定義するのかで発生率が大きく変わる。

Habtie Bantider Wubetらの2025年の報告では、POI発生率は手術種類によって約4~32%と幅広い。非腹部手術では比較的低く、整形外科手術で約5~20%、胸部または泌尿器科手術では約10~15%とされる。

この数値からも、POIは腹部手術だけに限定された合併症ではないことが分かる。消化管を直接操作しない手術でも、麻酔、オピオイド、全身炎症反応、安静などによって腸管運動が抑制される可能性がある。

一方、Ya-Nan Yinらの2023年の報告では、腹部手術後のPOIは平均約10~15%とされる。これは冒頭の10~30%という広い推定範囲の下寄りに位置する。

ただし、婦人科がんのcomplete staging surgeryでは最大50%に達することがあるとされ、非常に大きな手術侵襲や広範な腹腔内操作を伴う症例では発症率が著しく高まる。

この50%という数値は一般的な腹部手術患者全体のPOI発生率ではなく、特定の高侵襲婦人科がん手術患者における値である。したがって、10~15%と50%を同じ分母で比較するべきではない。

POIによって入院期間は最大約5日延長する可能性があるとされる。したがって、POIは単に術後の不快症状を増やすだけでなく、病床利用、看護負担、点滴・画像検査、追加薬剤などを通じて医療費を大きく増加させる。

Muhammad Bilalらの2025年の研究では、探索的開腹術を受けた18~60歳の149人中8.7%がPOIを発症した。

この研究では男性が55.7%を占め、POIは手術時間の延長や入院期間の長期化と有意に関連していた。

ただし、男性55.7%という数値はPOIに男性が本質的に罹患しやすいことを示すとは限らない。研究対象集団そのものの男女構成や手術背景によって見かけ上の差が生じた可能性がある。

提示資料全体でも、POIに一貫した強い男女差があるとはされていない。むしろ、手術内容、手術時間、併存疾患、周術期管理の方が発症リスクを大きく左右する。

肥満も重要なリスク因子として示されている。Gerardo Sarnoらの2025年の報告では、BMI 30kg/m²以上の肥満を伴う大腸がん患者でPOIリスクが上昇し、周術期合併症や院内死亡も増えるとされる。

腹腔鏡的大腸切除術ではPOI発生率11.8%が報告されている。ここでも、この11.8%は「肥満者全体のPOI有病率」ではなく、特定の大腸がん手術集団における術後発生割合である。

POIは成人の幅広い年齢層で生じるが、発症率は年齢そのものより、手術タイプ、併存疾患、術式、手術時間、薬剤使用などの影響を強く受ける。

一方で、高齢者では併存疾患が多く、術後回復が遅れやすく、オピオイドや多剤併用の影響も受けやすいため、臨床的にはより複雑な管理を要する可能性がある。

国別では、米国でPOIが依然として一般的な術後合併症として大きな負担を示している。最近のNIH収載研究では、待機的腹部手術患者の最大約25%がPOIを発症するとされる。

さらに、米国の大腸手術では遷延性POIが約5~30%に生じるとされる。5~30%という非常に広い幅は、遷延性POIの定義や術式、患者背景による違いを反映している可能性が高い。

したがって、米国の「最大25%」と「大腸手術5~30%」は同じ患者集団ではなく、前者は待機的腹部手術全般、後者は大腸手術における遷延性POIというより限定された指標である。

英国では、Habtie Bantider Wubetらの2025年の報告で、整形外科患者の約7.8%にPOIが発生するとされる。

イタリアでは、待機的脊椎手術後のPOI発生率が約8.0%、フランスでは非腹部手術後で約7.9%とされる。

これらの約8%前後という値は、腹部手術の10~30%前後より低い。しかし、英国は整形外科、イタリアは脊椎、フランスは非腹部手術という異なる集団であるため、国そのもののリスク差というより手術構成の違いを反映している可能性が大きい。

ドイツでは、Timur Buniatovらの2025年の報告で、イレウスによる年間入院が約11万件、人口10万人あたり108例とされる。

ただし、この「ileus」が術後イレウスのみを意味するのか、機械的イレウスなど他の腸閉塞を含む広い診断カテゴリーなのかは提示資料だけでは明確ではない。

したがって、ドイツの年間11万件をPOI患者数としてそのまま扱うには注意が必要である。今回の資料の中でも特に疾患定義の確認が必要な数値である。

日本では、Fasika Chanie Animawらの2025年の報告で、腹部手術後POIが13.5%に発生するとされる。

この値はYa-Nan Yinらが示す腹部手術平均10~15%の範囲内にあり、日本の腹部手術患者でも世界的な報告と概ね近い負担があることを示す。

スペインとインドについては、今回提示された資料では具体的な国別POI発生率は示されていない。ただし、8主要市場として術後患者数や将来動向が分析されている。

疫学上で最も重要なのは、POIが「慢性疾患の有病率」のように人口全体で評価する疾患ではなく、「手術という曝露を受けた患者のうち何%が発症するか」という術後合併症である点である。

そのため、POI患者数を予測するには、一般人口規模よりも、腹部手術、大腸手術、婦人科がん手術、泌尿器科手術、整形外科手術などの件数と、その手術別POI発生率が重要になる。

また、生理的POIと遷延性POIを分けることも重要である。短期間の腸管運動低下まで含めれば発生率は高くなり、医療介入が必要な遷延性POIに限定すれば低くなる。

この定義の差が、研究ごとに4%から50%まで非常に広い発症率を示す主な理由の一つと考えられる。

POIは患者の身体的負担だけでなく、経済的負担も大きい。排便・排ガスが戻らなければ経口摂取を進めにくく、静脈輸液や追加観察が必要となり、退院が遅れる。

悪心・嘔吐が強い場合には誤嚥リスクや脱水、電解質異常も問題となる。腹部膨満や疼痛によって離床も進みにくくなり、さらなる回復遅延につながる可能性がある。

治療は基本的に支持療法と予防的周術期管理が中心である。まず重要なのが早期離床で、できるだけ早く患者をベッドから離して身体活動を促すことで消化管運動の回復を支援する。

早期経腸栄養も重要である。耐容できる範囲で術後早期から経口・経腸摂取を再開することで、腸管機能の回復を促すことを目指す。

ただし、著明な腹部膨満や嘔吐などがある患者では無理な経口摂取は適切ではなく、個々の状態をみながら進める必要がある。

輸液と電解質管理も重要である。低カリウム血症などの電解質異常は腸管運動を悪化させる可能性があるため、適切に補正する。

一方、過剰な輸液による組織浮腫も腸管機能回復を遅らせる可能性があるため、適正な体液管理が求められる。

オピオイド鎮痛薬の使用をできるだけ減らすことも重要である。オピオイドは腸管のμオピオイド受容体を介して消化管運動を強く抑制するため、POIの主要な医原性リスク因子の一つとなる。

そのため、非オピオイド鎮痛薬や局所・区域麻酔などを組み合わせたマルチモーダル鎮痛によって、十分な疼痛管理を維持しながらオピオイド使用量を減らすことが推奨される。

著明な嘔吐や腹部膨満がある患者では、経鼻胃管による減圧が使用される場合がある。胃内容物や消化液を排出し、症状を軽減する。

ただし、全ての患者に予防的に経鼻胃管を留置するという意味ではなく、重度の膨満や嘔吐など臨床的必要性がある場合の支持療法である。

薬物療法としては、消化管運動改善薬が使用される場合がある。資料ではprokinetic agentsが挙げられているが、具体的な効果は患者背景や薬剤によって異なる。

また、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬であるアルビモパン(alvimopan)が、選択された患者でPOI期間を短縮する可能性があるとされる。

アルビモパンは中枢性の鎮痛作用を大きく妨げずに、腸管の末梢μオピオイド受容体を遮断することで、オピオイドによる腸管運動低下を軽減することを目的とする。

ただし、今回の資料でも「selected patients」とされており、すべてのPOI患者に一律に使用される治療ではない。

近年のPOI予防で特に重要なのがEnhanced Recovery After Surgery(ERAS)プロトコルである。これは単一の治療法ではなく、術前・術中・術後を通じた複数の周術期介入を組み合わせる包括的管理戦略である。

ERASには、早期離床、早期経口摂取、適切な輸液管理、オピオイド削減型鎮痛などが含まれ、術後腸管機能の早期回復と入院期間短縮を目指す。

したがって、POI市場では「発症後に薬剤で治療する」だけでなく、「手術前後の管理そのものを最適化して発症を予防する」ことが中心テーマとなる。

市場の観点では、POIは腹部外科、大腸外科、婦人科、泌尿器科、整形外科など多くの手術領域にまたがるため、潜在患者数は非常に大きい。

一方で、POIは独立した慢性疾患ではなく一過性の術後合併症であるため、患者数は各国の手術件数に強く依存する。

高齢化によって腹部・骨盤手術を受ける患者数が増えれば、POIの絶対症例数も増加する可能性がある。

また、より複雑ながん手術や高齢・高リスク患者への手術適応が拡大すれば、一件あたりのPOIリスクが増加する可能性もある。

一方、腹腔鏡・低侵襲手術の普及、ERAS導入、オピオイド使用削減、早期離床・早期栄養などが進めば、発症率や持続期間を低下させる方向に作用する。

したがって、2026~2035年のPOI患者数は、単純に外科手術数が増えることで一方向に増加するのではなく、手術件数増加と周術期管理改善のバランスによって決まる。

特に大腸手術では遷延性POIが5~30%に達するとの報告があり、発症率を数ポイント下げるだけでも入院日数や医療費への影響が大きい。

このため、市場上の重要指標は患者数だけでなく、POIによる追加入院日数、再入院、追加治療、医療費などにもある。

全体として本レポートは、POIを「主として腹部・骨盤手術後に手術侵襲、腸管操作、炎症、オピオイド、電解質異常などによって一時的に腸管蠕動が低下し、排ガス・排便遅延、腹部膨満、悪心・嘔吐、経口摂取不耐を生じる重要な術後合併症」と位置づけている。

発症率は手術内容と定義によって大きく異なり、全体で約4~32%、腹部手術で平均10~15%程度とされる一方、婦人科がんの大規模staging surgeryでは最大50%に達することがある。

探索的開腹術では8.7%、肥満を伴う大腸がんの腹腔鏡手術では11.8%など、患者背景や術式による違いも大きい。

国別には、米国の待機的腹部手術で最大25%、大腸手術の遷延性POIで約5~30%、英国の整形外科で7.8%、イタリアの待機的脊椎手術で8.0%、フランスの非腹部手術で7.9%、日本の腹部手術で13.5%とされる。

一方、ドイツの年間約11万件、108/10万人という「ileus」入院データは、POIのみか機械的腸閉塞などを含むかが提示資料だけでは明確でなく、POI患者数として直接使用するには注意が必要である。

また、これらの国別発生率は手術タイプが異なるため、そのまま「国ごとのPOIリスク差」として比較することはできない。POI疫学では、国よりもまず手術種類と症例定義をそろえることが重要である。

2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、高齢化、外科手術件数、がん手術の複雑化、肥満や併存疾患を持つ患者の増加がPOI症例数を押し上げる一方、ERAS、低侵襲手術、オピオイド削減型鎮痛、早期離床、早期経腸栄養などが発症率と持続期間を減らす方向に作用すると考えられる。

したがって、今後のPOI管理における中心的課題は、生理的な短期イレウスと治療を要する遷延性POIを適切に区別すること、手術前から高リスク患者を特定すること、術後は早期離床、早期栄養、適切な輸液・電解質管理、オピオイド使用削減を進めること、必要に応じて経鼻胃管減圧や選択的薬物療法を行うこと、そしてERASを通じて患者の消化管機能回復と退院を早めることである。2026~2035年は、POIを単に「手術後だから仕方なく起こる一時的な腸管停止」として扱うのではなく、予防可能・短縮可能な周術期合併症として積極的に管理し、患者負担、入院日数、医療費を同時に減らすことが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。

※目次構成

01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件

02
エグゼクティブサマリー

03
術後イレウス市場概要(8主要市場)
3.1 術後イレウス市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 術後イレウス市場の予測市場規模(2026年~2035年)

04
術後イレウス疫学概要(8主要市場)
4.1 術後イレウス疫学状況(2019年~2025年)
4.2 術後イレウス疫学予測(2026年~2035年)

05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断

06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因

07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 8主要市場における術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける術後イレウス疫学状況(2019年~2035年)

16
患者経路

17
治療課題および未充足ニーズ

18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察

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