「ナッツや種は食べてはいけない」は本当?「大腸憩室」がある人に知ってほしい、憩室炎(だいちょうけいしえん)の新常識

2026-10-21 21:45
池袋ふくろう消化器内科・内視鏡 クリニック東京豊島院

「大腸カメラを受けたら『大腸憩室(だいちょうけいしえん)があります』と言われた」

「大腸憩室があると、将来大変な病気になるの?」

「便秘が原因だから、食物繊維をたくさん取ればいい?」

「ナッツやゴマ、とうもろこしは食べないほうがいい?」

大腸カメラの結果で「大腸憩室(だいちょうけいしえん)」と書かれていると、不安になる方もいるかもしれません。

しかし、大腸憩室があることと、大腸憩室炎を起こしていることは別です。

大腸憩室そのものは決して珍しいものではなく、憩室があっても生涯にわたって特に症状がない人も多くいます。

一方で、憩室に炎症が起こる「憩室炎」になると、腹痛や発熱などの症状が現れ、場合によっては入院治療が必要になることもあります。

さらに近年は、治療や再発予防についての考え方も変わってきています。

2026年7月には、米国消化器病学会(American College of Gastroenterology:ACG)から新しい大腸憩室炎の診療ガイドラインが発表されました。そこでは、抗菌薬の使い方や食事、再発予防、大腸内視鏡検査の考え方などについて、最新のエビデンスを踏まえた推奨が示されています。

そこで今回は、医療法人社団アイメッド 池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院の院長・柏木宏幸医師(消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・総合内科専門医)が、大腸憩室について知っておきたいポイントを解説します。

■元動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=k34AD3vhyTo

そもそも「大腸憩室(だいちょうけいしえん)」って何?

大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態です。

イメージとしては、腸の壁に小さなポケットができている状態と考えると分かりやすいでしょう。

大腸カメラなどで「憩室があります」と指摘されることがありますが、

「憩室がある=病気になっている」

というわけではありません。

憩室があっても、特に症状がなく、そのまま過ごす人も少なくありません。

一方、憩室に炎症が起こると「大腸憩室炎」と呼ばれます。

憩室炎になると、腹痛や発熱などが現れることがあります。

さらに重症になると、膿瘍(膿がたまる状態)や穿孔(腸に穴が開くこと)などの合併症を起こし、入院や処置、場合によっては手術が必要になることもあります。

つまり、

大腸憩室があること
↓
必ず憩室炎になるわけではない

という点を、まず知っておくことが大切です。

「大腸憩室がある=一生心配」ではありません

大腸憩室は年齢とともに増えることが知られています。

また、憩室がある人のすべてが憩室炎を発症するわけではありません。

そのため、大腸カメラで「憩室があります」と言われたからといって、毎日必要以上に不安になる必要はありません。

ただし、「憩室があること」と「憩室炎を起こしたこと」は分けて考える必要があります。

特に一度憩室炎を経験した方は、再発について知っておくことが重要です。

2026年のACGガイドラインでは、初回の憩室炎後の再発リスクについて、初回後は約22%、2回目の後は約55%というデータが示されています。

ただし、再発したからといって、毎回重症化するわけではありません。

むしろ、膿瘍や穿孔などの合併症を伴う憩室炎は、再発時よりも初回発症時に起こることが多いとされています。

「左のお腹が痛い」とは限らない? 日本人は右側の憩室炎にも注意

憩室炎というと、「左下腹部が痛くなる病気」というイメージを持っている方もいるかもしれません。

欧米では左側の大腸に生じる憩室炎が多い一方、アジアでは右側の大腸に生じる憩室炎も比較的多いとされています。日本人では、特に若い世代で右側(盲腸や上行結腸)の憩室が多いことが知られています。

そのため、

右下腹部が痛いから虫垂炎(いわゆる盲腸)だろう

と自己判断することはできません。

憩室炎や虫垂炎など、似た症状を示す病気もあるため、症状だけで判断せず、必要に応じて画像検査などで確認することが重要です。

大腸憩室炎を疑ったら「CT」が重要になることも

大腸憩室炎では、腹痛の場所や発熱などの症状だけで確実に診断することは難しい場合があります。

特に初めて憩室炎が疑われる場合や、重症化が疑われる場合には、CT検査によって、

憩室周囲に炎症があるか

膿瘍ができていないか

穿孔などの合併症がないか

ほかの病気ではないか

などを確認することがあります。

2026年のACGガイドラインでも、特に初回発症時や重症例では、CTによる診断が重要とされています。

こんな症状があれば「前にもなったから」と我慢しない

大腸憩室炎で注意したい代表的な症状は、腹痛と発熱です。

特に、

普段とは明らかに違う強い腹痛

歩くと腹部に響くような痛み

発熱

お腹全体の強い痛み

お腹が張る

吐き気や嘔吐を伴う

などがある場合には、自己判断で何日も様子を見るのではなく、医療機関へ相談することが大切です。

また、以前に憩室炎になった経験がある方も、

「前回も家で治ったから今回も大丈夫」

と決めつけないようにしましょう。

症状の程度や合併症の有無によって、必要な治療は変わります。

憩室炎になったら「全員が抗菌薬」ではない?

ここは、今回のテーマの中でも特に知っておきたいポイントです。

以前は、憩室炎と診断されると抗菌薬が広く使われることがありました。

しかし、現在は「憩室炎なら全員に抗菌薬」という一律の考え方ではありません。

2026年のACGガイドラインでは、免疫機能が保たれていて全身状態が安定し、経口摂取が可能で、合併症や全身性炎症反応などの高リスク所見がない患者では、急性の単純性憩室炎に対する抗菌薬を一律には使用しないことが提案されています。

一方で、

免疫機能が低下している

フレイルがある

重い基礎疾患がある

経口で水分や食事を取れない

症状が悪化している

高リスク所見がある(症状が5日以上続く、嘔吐がある、血液検査で炎症の数値が高い、CTで膿のたまりがみられる など)

などの場合には、抗菌薬が必要になることがあります。

つまり、

「抗菌薬を使わない治療が新しい」

という単純な話ではありません。

「必要な人には使い、必要性が低い人には一律に使わない」

というように、患者さんの状態に応じて判断することが重要になっています。

なお、日本の外来では、抗菌薬を使わずに経過を細かく見守る体制を取りにくいことも多く、現在も抗菌薬を使用することは少なくありません。耐性菌や副作用への配慮を前提に、医師が患者さんごとに判断しています。

もちろん、現在処方されている抗菌薬を、この記事や動画を見て自己判断で中止することは避けてください。

「便秘が大腸憩室を作る」は本当?

大腸憩室について、昔からよく言われてきたのが、

「便秘になる」
↓
「硬い便を出すために腸の内圧が上がる」
↓
「腸の壁が外側に押し出されて憩室ができる」

という説明です。

しかし、現在はこれだけで説明できるとは考えられていません。

大腸憩室ができる背景には、年齢や遺伝的な要因など、生活習慣だけでは変えられない要素も関係すると考えられています。

そのため、

「憩室があるのは、便秘だった自分が悪い」

と必要以上に自分を責める必要はありません。

ただし、ここで誤解してはいけないのが、

「便秘が原因ではないなら、生活習慣は関係ない」

ということでもないという点です。

憩室ができることと、憩室炎を起こすことは別の問題だからです。

再発予防のために「食事・運動・体重」を見直す

2026年のACGガイドラインでは、憩室炎の再発リスクを減らすための生活習慣として、

野菜や果物を取り入れる

全粒穀物や豆類などを取り入れる

赤肉(牛肉・豚肉・羊肉など)の摂取を控えめにする

適正体重を維持する

定期的に身体を動かす

喫煙を避ける

過度の飲酒を控える

といった健康的な生活習慣が示されています。

「何か一つの食品を食べれば憩室炎を予防できる」というものではありません。

大切なのは、食事・運動・体重などを含めた生活全体を見直すことです。

「ナッツ・ゴマ・とうもろこし」は禁止しなくていい?

大腸憩室について、昔からよく聞かれるのが、

「ナッツは憩室に入り込むから食べないほうがいい」

「とうもろこしは避けたほうがいい」

「ゴマやイチゴの種も危険なのでは?」

という話です。

しかし、2026年のACGガイドラインでは、憩室があることを理由にナッツ、種、とうもろこし、ポップコーンなどを一律に避ける必要はないとされています。

これは、これらの食品を食べることが憩室炎の再発を増やすという十分な根拠がないためです。

「憩室があるから、好きなものを全部我慢しなければならない」

と考える必要はありません。

むしろ、食事全体のバランスを見直すことが重要です。

痛み止めの「NSAIDs」にも注意

もう一つ知っておきたいのが、痛み止めなどに使われるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。

2026年のACGガイドラインでは、憩室炎の既往がある人について、可能であればNSAIDsの定期的な使用を避けることが再発リスク低減の観点から示されています。

ただし、心臓や血管の病気などのためにアスピリンを医師から処方されている方もいます。

そのため、

「NSAIDsは危険だから、今飲んでいる薬をやめよう」

と自己判断するのは禁物です。

薬について気になることがあれば、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。

サプリやプロバイオティクスで「再発を防ぐ」は期待できる?

「腸活のためにプロバイオティクスを飲めば、憩室炎の再発も防げる?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、2026年のACGガイドラインでは、憩室炎の再発予防を目的としたプロバイオティクスの使用は推奨されていません。

特別なサプリメントを追加することよりも、まずは食事、運動、体重、喫煙、飲酒、薬の使い方など、生活の土台を整えることが重要です。

憩室炎が治ったら「大腸カメラ」は必要?

ここも、多くの患者さんが疑問に感じるポイントです。

答えは、全員が同じではありません。

2026年のACGガイドラインでは、合併症を伴う憩室炎から回復した場合には、大腸内視鏡検査が推奨されています。

一方、合併症のない単純性憩室炎の場合には、警告症状がある場合や、大腸がん検診を適切な時期に受けていない場合などに、大腸内視鏡検査が検討されます。

なぜ大腸カメラが必要になるのでしょうか。

それは、大腸がんなど別の病気が憩室炎と似た状態に見えることがあるためです。

したがって、憩室炎が治った後に大腸内視鏡検査を受けるかどうかは、

憩室炎の重症度

これまでの大腸カメラの結果

最後に検査を受けた時期

大腸がん検診の状況

血便や貧血、体重減少などの警告症状

などを踏まえて、担当医と相談することが大切です。

大腸カメラは「治った直後」に受ければいいわけではない

急性の憩室炎で強い炎症が起きている時期に、すぐ大腸カメラを行うとは限りません。
2021年に米国消化器病学会(American Gastroenterological Association:AGA。ACGとは別の学会です)が公表した臨床実践アップデートでは、大腸カメラは急性憩室炎の発症から6~8週間後、または症状が完全に消失した後の、いずれか遅いほうまで待つことが推奨されていました。

ただし、2026年のACGガイドラインでは、検査の必要性そのものを、憩室炎が単純性か複雑性か、警告症状があるか、大腸がん検診を適切に受けているかなどによって判断します。
つまり、

「憩室炎になったら、とにかく6~8週間後に全員が大腸カメラ」

という単純な話でもありません。
検査の必要性と適切なタイミングを、症状やこれまでの検査歴を踏まえて判断することが重要です。

「再発したら、次は手術?」という不安について

一度憩室炎になると、
「また再発したら手術になるのでは?」
と心配になる方もいます。

しかし、現在は「何回再発したら手術」という回数だけで決める考え方ではありません。
2026年のACGガイドラインでは、再発を繰り返す単純性憩室炎で生活の質に大きな影響が出ている場合などに、手術について相談することが推奨されています。手術によって再発リスクは低下しますが、再発が完全になくなるわけではありません。

そのため、
「2回なったから、もう手術」
と機械的に決めるのではなく、
● 合併症があるか
● 再発の頻度
● 症状の程度
● 日常生活への影響
● 手術によるメリットとリスク
などを総合的に考える必要があります。

大腸憩室がある人が覚えておきたい「5つのこと」

最後に、今回のポイントをまとめます。

1.大腸憩室があるだけで、大腸憩室炎とは限らない

憩室があっても、症状がなく過ごす人は少なくありません。

2.強い腹痛や発熱があれば、我慢しない

特に普段とは違う強い腹痛、発熱、お腹の張りなどがある場合は、医療機関へ相談しましょう。

3.単純性憩室炎なら、抗菌薬を一律に使うわけではない

ただし、抗菌薬が必要なケースもあります。薬の使用・中止は必ず医師の判断に従ってください。

4.ナッツや種を一律に禁止する必要はない

2026年のACGガイドラインでは、ナッツ、種、とうもろこし、ポップコーンなどを避けることは推奨されていません。

5.「憩室炎が治った=検査はもう不要」ではない

大腸がん検診の状況や症状、憩室炎の重症度などによって、大腸カメラが必要になる場合があります。
大腸憩室があると言われても、必要以上に怖がる必要はありません。
一方で、
「前にもなったから今回も大丈夫」
と症状を我慢するのも避けたいところです。
大切なのは、怖がりすぎることでも、放置することでもありません。

正しい情報を知り、自分の症状や検査結果に合わせて、必要なタイミングで医療機関に相談すること。
これが、大腸憩室と上手に付き合っていくための第一歩です。

柏木宏幸院長からのメッセージ

大腸憩室があると言われたからといって、毎日不安に過ごす必要はありません。
一方で、いつもと違う腹痛や発熱があるときに、「前にも大丈夫だったから」と我慢しすぎることも避けていただきたいと思います。
検査をして問題がなければ安心につながりますし、治療が必要な病気であれば、早めに対応することができます。
お腹の症状を一人で抱え込まず、気になることがあれば消化器内科へご相談ください。

【クリニック概要】

院名:医療法人社団アイメッド 池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院
院長:柏木 宏幸(かしわぎ ひろゆき)/日本消化器病学会 消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・日本内科学会 総合内科専門医
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